東京西部・小金井No.353★★地図で見る →
江戸東京たてもの園
東京・小金井公園にある野外博物館。1993年開園。江戸期から二十世紀半ばまでの建物約30棟——農家、商店、銭湯、建築家の自邸——を東京各地から移築復元し、内部まで公開している。

東京は絶えず自分を壊し続けてきた。火事、関東大震災、戦災、そして単純な経済——結果として、ふつうの街並みはほとんど元の場所に残っていない。1993年、小金井公園に開かれたこの野外博物館は、それに対する答えだ。現地保存が難しくなった価値ある建物を、解体し、運び、ここで組み直す。いま林の中に立つのは約30棟。江戸期から二十世紀半ばまでを覆っている。園内は三つのゾーンに分かれる。東ゾーンは下町の街並みの再現で、醤油店、文具店、荒物屋、居酒屋、そして入口に寺社のような唐破風を載せた銭湯「子宝湯」が並ぶ。西ゾーンは住宅群で、モダニズム建築家・前川國男が自分のために建てた家や、戦前の外国人居留者の洋館がある。中央に立つのは、いまビジターセンターとして使われている儀式用の殿舎だ。この園を成立させているのは、内部が家具ごと開かれていることに尽きる。靴を脱いで、上がれる。
なぜ穴場のままか
日本の文化財の多くは、非日常を保存している。城、寺社、富裕層の邸宅。ここが残しているのは、まず残らないものだ——銭湯、居酒屋、文具屋、農家の土間。そしてその中に立てる。復元天守を見上げるより、この街がどう暮らしていたのかがはるかに直接に伝わってくる。しかも都心と比べて驚くほど空いていて、時間の使い方が自由だ。時間指定券のような縛りは一つもない。
歴史・背景
1993年、江戸東京博物館の分館として開園した。敷地となった小金井公園には、かつて皇室の慶事のために建てられた殿舎があり、それがいまビジターセンターとして使われている。収蔵の方針は「現地では残せなくなった建物を引き受ける」というもので、結果として珍しい構成になった——著名な建築だけでなく、ありふれた商家や住宅が同じ密度で並ぶことになったからだ。東ゾーンの銭湯と商店街は、スタジオジブリ『千と千尋の神隠し』の湯屋の視覚的な参照元としてしばしば語られる。
見どころ(歩く順)

- 銭湯「子宝湯」
- 入口に、本来なら寺社に載るはずの唐破風を掲げた戦前の銭湯。街の設備に、あえて格式を借りてきている。脱衣所を抜け、タイル張りの浴室に立てる。建物の大きさが体で分かるのはこの場所だ。
- 下町の商店街
- 醤油店、文具店、荒物屋、傘屋——移築された店構えが並び、商品も帳場も奥の間もそのまま置かれている。外観を撮って終わりにせず、一軒ずつ中へ。本当に貴重なのは、店の裏にある蔵と住まいのほうだ。
- 前川國男邸
- 日本を代表するモダニズム建築家が、戦時下の厳しい資材制限の中で自分のために建てた家。それでいて内部は驚くほど明るく開かれている。「日本の住宅はどうやって近代になれるのか」という主張が、最も条件の悪い状況で形にされている。
- 江戸期の茅葺き農家
- 敷地の奥に、土間と囲炉裏を備えた茅葺きの農家が建つ。多くの日はボランティアが囲炉裏に火を入れている。煙が茅を守るからだ。そしてその匂いだけは、どんな写真にも写らない。
おすすめの楽しみ方
所要は2〜3時間を見ておきたい。ここを甘く見て、西ゾーンを駆け足で終える人が本当に多い。行けるなら平日がいい。週末は小金井公園に家族連れが出てきて、商店街のあたりが混む。ほとんどの建物で靴を脱いで上がるので、脱ぎ履きしやすい靴で。冬は床が冷えるので素足は避けて靴下を。敷地はおおむね平坦でベビーカーでも回れるが、砂利道と上がり框があるため、古い建物ではバリアフリーに限界がある。園内の居酒屋建物では軽い食事も出る。外に広がる小金井公園は都内屈指の広さなので、桜の季節なら1時間余分に取る価値がある。
実際の行き方
- 新宿駅→武蔵小金井駅(JR中央線快速・約25分)。
- 武蔵小金井駅北口 2番または3番のりば→小金井公園西口(西武バス・約5分)。
- 小金井公園西口→たてもの園 入園口(公園内を徒歩約5分)。
- JR中央線で武蔵小金井へ、西武バスに乗換
- 新宿駅→(JR中央線快速・約25分)→武蔵小金井駅→北口 2番または3番のりば→(西武バス・約5分)→小金井公園西口で下車→公園内を徒歩約5分で入園口。計約45分。バスは本数が多い。歩くのが好きなら駅から徒歩約20分、道は平坦。
- 帰りは小金井公園西口から
- 西武バスで武蔵小金井駅へ戻り、JR中央線で新宿・東京方面へ。バスは園の閉園時刻よりずっと遅くまで走っており、中央線も深夜0時過ぎまで運行している。
行く前に
- 現金
- 入園料が必要(学生割引あり、中学生以下は無料)。券売窓口はカード・IC決済に対応。売店と園内の居酒屋建物での飲食は安価なので、小額の現金も持っておくとよい。
- 定休
- 月曜休園(月曜が祝日の場合は翌平日)。年末年始も休園。閉園時刻は冬のほうが早く、最終入園は閉園の30分前。
- 別ルート
- 西武新宿線・花小金井駅からも行ける。南口から武蔵小金井駅行きの西武バスに乗り、小金井公園西口で下車。西武新宿線沿線から向かうならこちらが楽だ。
- 降りたあと
- 武蔵小金井駅北口の2番・3番のりばが、どちらも小金井公園西口を通る。バス停から小金井公園に入り、案内表示に従って徒歩約5分で入園門。