東京圏・山梨県山梨市No.368★★地図で見る →
ほったらかし温泉
甲府盆地の北縁、標高約700mの高台にある日帰り温泉。「あっちの湯」「こっちの湯」の二つの湯があり、盆地全体と富士山を望む。広い方の湯は日の出の1時間前に開く。

「ほったらかし」という名前のとおり、始まりは文字どおり放っておかれた湯だった。山梨のぶどう畑の上の斜面に湧いていて、周りにリゾートは何もない。代わりにあるのが眺めだ。尾根は標高約700m。甲府盆地がまるごと足元に沈み、その向こうの縁に富士山が立つ高さで、湯船は外を向いて、水面と落ち込みの間にほとんど何も置かずに作られている。湯は二つある。元祖の「こっちの湯」は無色透明、pH約9.68のアルカリ性単純温泉。あとから加わった「あっちの湯」ははるかに広く、淡い黄褐色でpH約10.1。どちらも肌にぬるりと来る。高アルカリの湯とはそういうものだ。この温泉のために旅程を組む人がいる理由は営業時間にある。日の出の1時間前に開くので、真夏なら朝4時前後、真冬なら6時前後。暗いうちに湯に浸かると、眼下の盆地には甲府の灯りが溜まっていて、やがて空が灰色になり、橙になり、谷の向こうに富士が現れる。夜は同じ景色が逆回しになり、22時の閉場まで盆地は光の海になる。
なぜ穴場のままか
山梨を訪れる外国人は県南の富士五湖に集まり、甲府盆地側まで越えてこない。だからここは「国内では有名、海外にはほぼ届いていない」ままだ。そのうえ温泉旅につきものの制約——高い旅館に泊まって夜に入るもの——を外している。移動の途中の明け方に寄れる日帰り湯で、しかもわざわざ寄る理由が富士の眺めとして用意されている。
歴史・背景
湯があるのは甲府盆地北縁、山梨市の上の斜面。この一帯は温泉地というより葡萄と桃の産地として知られ、すぐ下の斜面には笛吹川フルーツ公園が広がる。周辺の歴史ある湯治場とは違い、ここは受け継がれた温泉集落ではなく現代の日帰り施設で、泉質の効能よりも「日の出の眺め」で名前を作った。二つの湯はいずれもアルカリ性単純温泉で、肌がなめらかになる感触から日本で「美人の湯」と呼ばれる種類にあたる。宿泊施設は併設せず、あえて素っ気ない、磨きすぎない佇まいを保っている。
見どころ(歩く順)

- 夜明けのあっちの湯
- 二つのうち広い方で、日の出1時間前から開くのはこちら。盆地から富士へ抜ける視界がいちばん広い
- こっちの湯
- 元祖の湯。小ぶりで静かで、pH約9.68の無色透明。囲まれた落ち着きがある
- 甲府盆地の夜景
- 日没から閉場まで、同じパノラマが灯りの器に変わる。朝とはまったく別の訪問になる
- 温玉あげの売店
- 外の小さなカウンターで売る揚げ温泉玉子。山を下りる前に食べるのが定番
おすすめの楽しみ方
まず「日の出を見に行くのか、夜景を見に行くのか」を決めること。必要な段取りが正反対になる。日の出なら車かタクシーが要る——早朝のバスも電車もないので、多くの人は山梨市か石和温泉に泊まり、暗いうちにタクシーで上がる。夜景なら夕方に山梨市駅からタクシーで上がり、迎えを頼んでおけばいい。タオルは持参するか受付で買う。標高700m、湯から出ると夏でも空気が冷たいので羽織るものを一枚。タトゥーは伝統的な旅館より寛容に扱われるが、当日確認しておくのが確実。
実際の行き方
- 新宿駅→山梨市駅(JR中央線特急「かいじ」・約1時間30分)。
- 山梨市駅→ほったらかし温泉(タクシー約10分。夜明け前なら前夜に予約)。
- 眺めを取るなら「あっちの湯」、静けさを取るなら元祖の「こっちの湯」で入浴料を払う。
- 特急で山梨市駅へ、そこからタクシー
- 新宿駅→(JR中央線特急「かいじ」・約1時間30分)→山梨市駅。駅から丘の上まではタクシーで約10分。温泉まで行く路線バスはない。日の出目当てなら前夜のうちにタクシーを予約しておくこと。夜明け前の駅前に車は待っていない。
- タクシーで下り、同じ線で戻る
- 温泉から山梨市駅へタクシーで下り(約10分)→(JR中央線特急 新宿行き・約1時間30分)→新宿駅。施設前でタクシーは待機していないので、湯から上がる前に受付で呼んでもらう。特急の時間が合わなければ中央線の普通列車でも戻れるが、所要時間はかなり延びる。
行く前に
- 現金
- 入浴料は湯ごとに必要。二つは別施設で入口も会計も別なので、両方入るなら二度払うことになる。素朴な日帰り施設でカード対応は限られるため、現金を用意しておくこと。タオルや小物は受付で買える。
- 定休
- 開場時間は日の出に合わせて年間で動く——真夏で4:00前後、真冬で6:00前後。閉場は22:00、最終受付21:30。夜明け前から開くのは「あっちの湯」で、もう一方は朝以降の開場になる。早朝の予定を立てる前に、その月の開場時間を公式サイトで確認すること。
- 別ルート
- 中央線でひと駅西の石和温泉駅も実用的な拠点で、タクシーの距離は同程度。車なら中央自動車道の一宮御坂または勝沼インターから約15分で、広い無料駐車場がある。日本人客の多くは車で来る。
- 降りたあと
- 山梨市駅から笛吹川フルーツ公園の脇を登り切った先が温泉。「あっち」「こっち」の二つの入口が別々に表示されている。すべて屋外なので天気の想定を。