東京圏・埼玉県春日部市No.366★★地図で見る →

首都圏外郭放水路

〜春日部の地下50mに広がる大空間〜

local穴場——実はすごい

東京北郊の地下約50mに埋まった、現役の治水施設。長さ177m・59本の柱が支える調圧水槽は「地下神殿」と呼ばれ、事前予約制の見学会でのみ内部に入れる。

首都圏外郭放水路
実写(ライセンス済み)Ubahnverleih / CC0

東京の北に広がる土地は平坦で低く、勾配のほとんどない川がいくつも流れている。台風が関東平野に居座るたびに水があふれた土地だ。その答えとして13年をかけて2006年に完成したのが、地表からは何も見えない仕組みだった。地下約50m、内径10mのトンネルが6.3km。地上の川とは、直径約30m・深さ約70mの立坑5本でつながっている。中小河川があふれると水は立坑を落ち、地下を移動し、はるかに大きな江戸川へポンプで押し出される。ポンプの手前にある最後の部屋が、水の勢いを整えるための調圧水槽——ここが有名になった。長さ177m、幅78m、天井は18m上。それを59本の角柱が支え、柱一本の重さは約500トンある。装飾は一切なく、象徴的な意味もない。柱は浮力に抗して屋根を押さえるためだけに立っている。それでも柱の間に立って、自分の足音が遠くまで届くのを聞いていると、大聖堂の内部にいる感覚としか言いようがない。訪れた人々が「地下神殿」と呼び、その名前が公式の治水施設に定着した。

なぜ穴場のままか

訪日客の東京周辺の旅程に土木は入らない。だからここは、国内では有名なのに海外にはほぼ届いていない数少ない場所になっている。しかも「氾濫原の上の都市がなぜ水没しないのか」という、旅行者が普段考えない問いに、映画のセットのような一室で答えてしまう。予約制であることが、そのまま人混みを削っている。

歴史・背景

埼玉県東部の中川・綾瀬川流域は、ほとんど高低差のない浅い盆地に複数の河川が集まる地形で、20世紀に市街化が進むにつれ水害が慢性化した。放水路の建設は1993年に始まり、全区間が稼働したのは2006年。管理は国土交通省関東地方整備局江戸川河川事務所。水を汲み上げるポンプは航空機用エンジンを転用したガスタービンで駆動し、最大で毎秒200立方メートルを江戸川へ排出できる。年に数回は実際に稼働する現役設備であり、洪水対応中は見学会が中止される。

見どころ(歩く順)

実写(ライセンス済み)京浜にけ / CC BY-SA 3.0
調圧水槽
「地下神殿」そのもの。長さ177m、柱59本、天井18m。エレベーターはなく、長い階段を下りて入る
第1立坑
直径約30m・深さ約70mの円筒。スペースシャトルが入る大きさとされ、コースによっては上から覗き込める
ガスタービンのポンプ室
溜めた水を江戸川へ持ち上げる心臓部。航空機エンジンを転用したタービンが回す
龍Q館(庄和排水機場)
見学会の集合場所となる地上の施設。操作室と、この流域がどう水に浸かるかの展示がある

おすすめの楽しみ方

まず予約、それから一日の組み立て——ふらりと行ける場所ではない。見学会は所要時間も料金も異なる複数コースがあり、いちばん短いコースが調圧水槽に直行する。100段を超える階段を下りて登り返すので、歩ける靴で。水槽の床は湿っていて、8月でもはっきり冷たい空気なので上に羽織るものを一枚。撮影は可能で、多くの人はそれが目的だが、暗さは想像よりスマホで足りる。北埼玉の平野で一日にするなら、春日部の町か、帰路の川越と組み合わせるといい。

実際の行き方

起点
東武浅草駅
所要
約1時間30分 · 完全予約制の見学会
降車
南桜井駅(東武アーバンパークライン)
  1. 公式サイト(gaikaku.jp)で見学会を事前予約する。
  2. 東武浅草駅→春日部駅(東武スカイツリーライン急行・約45分)。
  3. 春日部駅→南桜井駅(東武アーバンパークライン・約10分)。
  4. 南桜井駅→龍Q館(タクシー約7分、徒歩25〜40分)。
東武線で南桜井へ、そこからタクシー
東武浅草駅→(東武スカイツリーライン 急行 久喜・南栗橋方面・約45分)→春日部駅→(東武アーバンパークライン 柏方面・約10分)→南桜井駅。駅から施設までは約2.3km。駅前のタクシーで約7分、徒歩なら25〜40分。集合場所の龍Q館には予約時刻の10分前までに着いておく。
同じ経路を戻る
南桜井駅へタクシーまたは徒歩で戻り→(東武アーバンパークライン・約10分)→春日部駅→(東武スカイツリーライン 浅草行き・約45分)→東武浅草駅。施設前に常時タクシーがいるとは限らないので、見学が終わる前に受付で呼んでもらうと確実。
現在地からの経路を開く(Google マップ)↗

行く前に

現金
見学会は有料で、コースごとに料金が違う。調圧水槽だけを見る最短コースがいちばん安い。予約はWEBの個人予約が基本で、受付時間内なら電話でも受け付けている。東武線とタクシーはICカード(Suica/PASMO)が使えることが多いが、この一帯では現金も持っておくこと。
定休
実際に洪水調節で稼働している間は、見学会が予告なく中止になる。定期的な非開催日もあるので、必ず公式のスケジュールを確認すること。水槽コースは100段以上の階段を下って登り返す行程で、エレベーターはない。階段が難しい人には向かない。土日の枠は早く埋まる。
別ルート
春日部駅は東武スカイツリーラインで北千住からも来られる。北千住は東京メトロ日比谷線・千代田線に接続するので、都心東部に泊まっているならこちらが便利。南桜井駅からは春日部市のコミュニティバスも施設方面へ走るが、本数は1日数便しかない。
降りたあと
南桜井駅から北東の江戸川堤防方向へ向かう。集合場所はトンネル入口ではなく庄和排水機場の龍Q館。調圧水槽へはそこからガイドと一緒に歩いて下りる。

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