東京圏・神奈川県横須賀No.355★★地図で見る →

猿島

history穴場——実はすごい

東京湾で唯一の自然の無人島。横須賀・三笠桟橋から船で約10分。十九世紀の海防要塞の煉瓦トンネル、アーチ構造の弾薬庫、砲台跡が森に呑まれた状態で残る。砂浜・釣り場・バーベキュー場もある。

猿島
実写(ライセンス済み)Mobius One / CC BY-SA 4.0

猿島は横須賀の沖2キロに満たない場所に浮かぶ、木に覆われた小さな岩の島だ。東京湾の航路のただ中、湾口に位置する。この湾で唯一の自然の無人島であり、江戸へ向かう船の正面に立つというその位置ゆえに、早くから要塞化された。幕末には海防の砲台が置かれ、のちに旧日本陸軍がこの島を本格的に築城する。尾根を貫く煉瓦張りのトンネル、斜面に穿たれたアーチ構造の弾薬庫、高所に据えられた砲座と指揮所。そして放棄された。いま残っているのは、森に取り返されつつある要塞である。煉瓦の目地からシダと根が伸び、トンネルの壁は湿って緑を帯び、本来は隠されるべく設計された切通しに、樹冠を抜けた光が落ちてくる。訪れる人はいつからか、この主坑道を「ラピュタの道」と呼ぶようになった。要塞遺構のまわりには小さな砂浜、釣り場、バーベキュー場もあるので、40分の軍事考古学の散歩にすることも、丸一日過ごすこともできる。

なぜ穴場のままか

東京から日帰りできる範囲に、これに似た場所は他にない。要塞跡は日本各地にあるが、一つの小さな系として端から端まで1時間以内に歩き通せるものは稀で、しかも船で渡る島の上にあるものはほとんどない。煉瓦そのものも見どころだ。多くが十九世紀の短い時期にしか日本で使われなかった積み方で組まれており、この遺構が国の史跡に指定されている理由の一つになっている。他所なら管理の失敗と呼ばれるであろう「草に埋もれた状態」が、この島の写り方をつくっている。

歴史・背景

猿島に砲台が置かれたのは幕末——外国船の東京湾入りが、江戸への接近路を防衛上の問題に変えた時期のことだった。その後、旧日本陸軍がこの島を本格的な築城陣地へと整備し、尾根を貫く煉瓦張りの坑道と弾薬庫が穿たれた。煉瓦の多くは、十九世紀の短い期間しか日本で用いられなかった積み方で組まれている。この遺構が国の史跡に指定されている理由の一つがそれだ。島名は、東京湾で嵐に遭った日蓮を白い猿が導いて上陸させたという伝承に由来する。

見どころ(歩く順)

実写(ライセンス済み)Mobius One / CC BY-SA 4.0
尾根を貫く煉瓦のトンネル
島の背骨を切り通した主坑道。煉瓦張りで、壁は濡れ、目地からシダが生えている。最も撮られている区間だ。急がずに歩き、頭上のアーチの組み方を見上げてほしい。坑口だけを撮って帰ると、いちばん手の込んだ部分を見落とすことになる。
アーチ構造の弾薬庫と砲座
切通しに沿って、斜面に埋め込まれた煉瓦アーチの弾薬庫が並び、その上に砲座が置かれている。中に入って歩ける。規模は記念碑的ではなくむしろ生活的で、そのぶん大要塞よりも構造の意図が読み取りやすい。
高所からの東京湾
要塞遺構から尾根の見晴らし点へ道が上がる。眼下は東京湾の航路で、対岸に房総半島、目の前をコンテナ船が通っていく。なぜこの島が要塞化されたのか、ここに立てば説明はいらない。
砂浜と磯の道
船着き場のそばに小さな砂浜があり、そこから磯づたいの道が伸びる。夏は海水浴とバーベキューの島になり、季節を外すと誰もいない。頭上の要塞との落差こそが、この島の性格の大半を占めている。

おすすめの楽しみ方

島は1時間ほどで一周できるが、ゆとりを見るなら2〜3時間。要塞の周回、尾根の展望、砂浜での休憩まで入れてちょうどいい。坑道と斜面の道は湿って足元が不均一で、照明のない区間もある。グリップのある靴で行き、弾薬庫の中をきちんと見たいなら小さな懐中電灯を持っていくとよい。混むのは夏——海水浴とバーベキューの予約が入る季節だ。晩秋と春なら、要塞跡はほぼ独り占めできる。この旅程を壊す要因はただ一つ、船の時刻表である。便はおおむね1時間に1本、最終は思っているより早く、荒天なら丸ごと欠航する。行く日の朝に、時刻と天候の両方を確認すること。

実際の行き方

起点
品川駅
所要
約90分 · 電車+船10分
降車
横須賀中央駅(京急本線)
  1. 品川駅→横須賀中央駅(京急本線特急・約50分)。
  2. 横須賀中央駅→三笠桟橋(三笠公園を抜けて徒歩約15分)。
  3. 三笠桟橋→猿島(船・約10分/時刻表運航でおおむね1時間に1便)。
京急で横須賀中央へ、三笠桟橋まで歩いて乗船
品川駅→(京急本線特急・約50分)→横須賀中央駅→市街と三笠公園を抜けて徒歩約15分で三笠桟橋→(猿島航路・約10分)→猿島。計約90分。船は時刻表に沿った運航で、おおむね1時間に1便(夏は増便)。出発前に公式サイト(sarushima.jp)で当日の時刻を確認すること。
帰りも同じ船で
島からの便も掲示の時刻表どおりで、最終便は季節により午後から夕方。この行程で唯一の厳しい制約がこれだ。乗船券を買うときに最終便の時刻を必ず確認し、桟橋には早めに戻ること。乗り逃したときの代替手段はない。
現在地からの経路を開く(Google マップ)↗

行く前に

現金
料金は2種類——往復の乗船料と、それとは別の入園料。どちらも三笠桟橋の窓口で購入する。バーベキューセットや用具のレンタルは別予約で、夏は事前手配が必要。
定休
荒天やうねりが強い日は欠航する。冬季は減便・運休となる日もある。条件が崩れると直前に欠航が決まるため、前夜ではなく当日の朝にsarushima.jpを見ること。
別ルート
JR横須賀駅からも三笠桟橋まで徒歩約20分で歩ける。品川から京急ではなく、東京・鎌倉方面からJR横須賀線で来るなら、こちらのほうが素直だ。
降りたあと
三笠桟橋は三笠公園の突端にあり、隣に記念艦「三笠」が保存されている。目印になるうえ、出航まで時間があるなら立ち寄る価値もある。

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