和歌山南東・那智勝浦No.329★★地図で見る →
忘帰洞
〜熊野灘に口を開けた洞窟の湯〜
熊野の海岸線、天然の海食洞に湯を張った温泉。勝浦湾を船で渡って向かう。洞窟の奥は太平洋へ直接開いている。

南紀勝浦は熊野の海に面した温泉地で、その最も有名な湯は建物の中にない。忘帰洞は、ホテル浦島の下の断崖にある正真正銘の海食洞だ。波が削った岩の底に湯を張っただけで、天井は低く暗いまま弧を描き、奥は熊野灘へ直接開いている。凪の日は海面の照り返しが洞窟いっぱいに入り、時化の日は真下の岩に波が当たって、しぶきが湯船まで越えてくる。たどり着き方も含めて体験になっている。宿は道路の通じない岬にあるため、町の桟橋から専用の船で湾を渡る——所要は約5分だ。
なぜ穴場のままか
県の公式サイトにも載る全国区の名湯だが、紀伊半島の先端、大阪から約4時間。この地域を訪れる外国人の多くは熊野古道だけを歩いて通り過ぎていく。
歴史・背景
この洞窟は湯船になる前から、海が削ってできたものだった。「帰るのを忘れる洞」の字を当てた名は、ここに浸かった貴人が帰ることを忘れたと語ったことに由来すると伝わる。宿がある岬は那智勝浦の町の外れ。町は日本有数のマグロ水揚げ港であり、熊野古道への海の玄関口でもある。
見どころ(歩く順)

- 洞窟の口
- 奥がそのまま熊野灘へ開く。うねりのある日は湯船までしぶきが来る
- 削られたままの岩天井
- 低く、暗く、弧を描く。造ったものではなく海が削ったもの
- 玄武洞(もう一つの洞窟風呂)
- 同じ岬にある第二の岩窟風呂。多くは同じ券で入れる
- 湾を渡る5分
- 勝浦桟橋からの送迎船。正面に岬の断崖が近づいてくる
おすすめの楽しみ方
選べるなら、少し荒れた日に。凪の日の洞窟は静かで美しいが、うねりの日は真下の岩に波が当たり、その音が洞窟いっぱいに響く——人が覚えて帰るのはそちらの方だ。北行きの最終特急に追われないよう、昼過ぎの入浴を目安に。
実際の行き方
- 新大阪駅→紀伊勝浦駅(JR特急くろしお・約4時間・1日数本)。
- 紀伊勝浦駅→勝浦桟橋(徒歩・約5〜7分)。
- 勝浦桟橋→岬(送迎船・約5分)→フロントで日帰り入浴の受付。
- JR特急くろしお+送迎船
- 新大阪駅→(JR特急くろしお・約4時間)→紀伊勝浦駅。ここまで来る「くろしお」は1日数本のみなので、指定席を取り当日の運行を確認すること。駅から勝浦桟橋まで徒歩約5〜7分、そこから専用の送迎船で湾を渡る(約5分)。
- 船で戻り、特急で北へ
- 送迎船で勝浦桟橋へ戻り、紀伊勝浦駅まで歩く。大阪方面の「くろしお」は本数が少なく、使える最終は夕方に出る。出発前に当日の時刻表を必ず確認すること——ここは「遅くなっても帰れる」場所ではない。
行く前に
- 現金
- 日帰り入浴は大人約1,300円、フロントで支払う。JRの切符はICカード・クレジットカード可だが、町なかでは現金も持っておきたい。
- 定休
- 日帰り利用はおおむね9:00〜19:00(最終受付18:00頃)。忘帰洞は時間帯で男女が入れ替わるので、思い込まずに到着時にフロントの掲示を確認すること。
- 別ルート
- 同じ岬にあるもう一つの洞窟風呂「玄武洞」も、たいてい同じ日帰り券で入れる。
- 降りたあと
- 紀伊勝浦駅から勝浦桟橋まで徒歩約5〜7分。送迎船はそこから出る。整備等で船が運休している期間はワゴン車での送迎に切り替わるので、事前に公式サイトを確認するとよい。