京都・蹴上/岡崎No.386★★地図で見る →

蹴上インクライン

〜舟を山の上へ運んだ傾斜鉄道〜

history穴場——実はすごい

1891年に舟を36mの落差の上へ運んだ傾斜鉄道の跡。レールはそのまま残り、蹴上駅のすぐ脇で桜並木の無料遊歩道になっている。

蹴上インクライン
実写(ライセンス済み)Kirin7739 / CC BY 4.0

1869年に都が東京へ移り、御所から人がいなくなった京都は、土木で立て直そうとした。その最大のものが琵琶湖疏水である。隣の滋賀の湖から山を貫いて水路を掘り、水と動力と物流を街へ引き込む計画だ。水路は機能した。だが蹴上の船溜とその下の南禅寺船溜のあいだには約36mの落差があり、舟はそこを下れない。出した答えは「舟を水から上げる」ことだった。全長582mの傾斜鉄道を敷き、舟を車輪付きの台車に載せ、ケーブルで坂を上げ下げする。1891年の開業当時、この種の傾斜鉄道としては世界最長だった。1948年、トラック輸送に意味を奪われて運転を終え、そのあとは、ただ置かれた。レールは今も斜面に埋まったままで、舟と台車が線路上に展示され、全体が遊歩道になっている。桜の二列に挟まれて枕木の上を登り、両端には疏水のレンガ構造物が見えている。

なぜ穴場のままか

京都の一級の桜の名所はほぼすべて有料か閉門時間がある。ここは門も券も開場時間もない。つまり「夜明けの花の下」が、円山公園や哲学の道では成立しない形で本当に成立する。しかも地下鉄の出口から徒歩2分で、1891年のレールをロープ越しに眺めるのではなく、その上を歩ける。

歴史・背景

琵琶湖疏水を測量し掘り抜いたのは田邉朔郎。1885年の着工時、まだ20代を出たばかりだった。当時の日本最大の土木事業でありながら、労働も技術もほぼ国内で賄われ、日本初の事業用水力発電所を動かし、その電気が日本初の電車を京都で走らせた。インクラインは1891年開業、1948年廃止。蹴上駅の周辺には同じ工事の産物が別の形で残っている。1888年の「ねじりまんぽ」は、頭上のインクラインの斜めの荷重を受けるためにレンガを螺旋状に積んだ歩行者トンネルだ。10分下れば、疏水の水を南禅寺の境内に通す水路閣がある。疏水一帯は2020年に日本遺産に認定された。

見どころ(歩く順)

実写(ライセンス済み)KimonBerlin / CC BY-SA 2.0
線路跡そのもの
582mにわたって当時のレールと枕木が斜面に残る。線路の上を歩けること自体がこの場所の要点
舟と台車の展示
木造の舟が車輪付き台車に載ったままレール上に置かれ、乗せ替えの仕組みがそのまま分かる
ねじりまんぽ
1888年の歩行者トンネル。頭上のインクラインの斜めの荷重を受けるためレンガを螺旋状に積んである。駅前の小さな土木の見せ場
桜並木
斜面の両側に植えられ、4月上旬には坂が花のトンネルになる

おすすめの楽しみ方

夜明けに行くこと。特に桜の時期は。門も開場時間もないので、4月上旬の明け方のインクラインは、京都の一級の桜の名所を独り占めできる数少ない手段だ。同じ斜面が朝10時には行列になる。靴はグリップのあるものを。枕木の間隔は歩行者用ではないし、バラストは崩れる。そのあとは坂を下って続けるといい——ねじりまんぽをくぐって8分で南禅寺と1890年の水路閣、さらに岡崎の美術館群か哲学の道へ。この一連はすべて1890年代の同じ土木事業の産物で、読むより歩いたほうが早く腑に落ちる。

実際の行き方

起点
京都駅
所要
約20分 · 地下鉄 頻発
降車
蹴上駅(京都市営地下鉄東西線 T09)
  1. 京都駅→烏丸御池(烏丸線)→蹴上駅(東西線・東行き)。
  2. 駅を出て徒歩2分で坂の下端。桜並木のあいだを枕木づたいに登る(端から端まで約10分)。
  3. 戻ってねじりまんぽをくぐり、8分下って南禅寺と1890年の水路閣へ。
京都駅→蹴上駅(地下鉄・1回乗換)
京都駅 →(烏丸線・北へ約5分)→ 烏丸御池 →(東西線・東へ乗換・約8分)→ 蹴上駅(T09)。駅を出るとインクラインはもう頭上にあり、坂の下端まで徒歩2分。合計およそ20分。電車は数分間隔。
蹴上から戻る、または南禅寺へ歩く
蹴上駅から東西線で三条・烏丸御池・京都市役所前方面へ。おすすめは、ねじりまんぽをくぐって坂を8分下り南禅寺へ、そのまま岡崎を抜けて同じ路線の東山駅から帰る形。終電は深夜まである。
現在地からの経路を開く(Google マップ)↗

行く前に

現金
無料。門も券売もなく、開場時間の概念がない公共の遊歩道。地下鉄はICカード(ICOCA・Suica・PiTaPa等)が使える。近くの琵琶湖疏水記念館も無料。大津〜蹴上の季節運航「疏水船」は別途予約・有料。
定休
いつでも歩けるが、足元は枕木とバラストで平らではない。暗い時間や雨のあとは歩きにくい。4月上旬は桜で日中の人出が非常に多くなるが、同じ斜面が夜明けにはほぼ無人になる。
別ルート
三条京阪からは地下通路で三条駅へ移り、東西線で東へ2駅・約4分。京都駅から市バス5系統・100系統で神宮道・岡崎方面へ出れば、坂の下端まで徒歩約10分。
降りたあと
蹴上駅の改札を出るとすぐ脇に斜面が立ち上がる。駅前広場のレンガトンネル「ねじりまんぽ」はインクラインの下をくぐり、南禅寺方面へ通じている。

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