東京圏・千葉県銚子No.357★★地図で見る →

犬吠埼灯台

history穴場——実はすごい

千葉県銚子、関東最東端の岬に立つ1874年竣工の煉瓦造灯台。設計は英国人技師リチャード・ヘンリー・ブラントン。九十九段のらせん階段で展望室まで上れ、隣に資料展示館がある。世界灯台100選に選定。

犬吠埼灯台
実写(ライセンス済み)Aspere / CC0

犬吠埼は、関東平野が太平洋へ尽きる、銚子半島の東端の岬である。そこに立つ灯台の竣工は1874年、明治のごく初期のことだ。設計はリチャード・ヘンリー・ブラントン——新政府に招かれて日本の沿岸に灯りを入れていったスコットランドの技師で、「日本の灯台の父」と呼ばれる人物である。塔は輸入品ではなく国産の煉瓦で積まれた。この第一世代の灯台のうち、いまも建ち、いまも現役で光を放っているものはごくわずかで、これはその一つだ。そして珍しいことに、この灯台は開かれている。九十九段のらせん階段が塔の内部を上がり、屋外の展望室に出る。そこから見えるのは、遮るものひとつない太平洋の水平線と、眼下で弧を描いて去っていく海岸線だ。塔のかたわらの資料展示館には、かつて使われていたフレネルレンズの装置と、灯台事業の資料が収められている。岬の位置と海岸線の形のせいで、元日の日の出はここが、いくつかの山と島を除けば日本の本土で最も早い。だからこそ、正月の朝には数万人がこの岬に出てくる。

なぜ穴場のままか

明治の煉瓦の技術、上れる塔、そして本当に東を向いた水平線——この三つが揃う場所はそう多くない。日本の歴史的な灯台の大半は非公開か、柵の外から眺めるだけの展望地になっている。ここは上れる。九十九段と、上りきった先の海風そのものが体験になる。しかも道中がまたいい。ここへ運んでくれる銚子電気鉄道は、経営の苦しい小さなローカル線で、濡れ煎餅を売って生き延びていることで知られている。移動手段というより、訪問の一部だ。

歴史・背景

竣工は1874年。開港後の明治政府が進めた沿岸灯明整備の一環で、安全な航行の確保が条約上の義務となった時期の事業だった。政府に雇われたスコットランドの技師リチャード・ヘンリー・ブラントンが、同じ時期に日本各地の沿岸でこの塔と多くの灯台を設計している。塔は輸入煉瓦ではなく国産の煉瓦で積まれており、航路標識であると同時に、日本の工業力の実証でもあった。世界灯台100選・日本の灯台50選に選ばれ、重要文化財にも指定されている。

見どころ(歩く順)

実写(ライセンス済み)excl-zoo / Public domain
九十九段と展望室
塔の内部を九十九段のらせん階段が上がり、屋外の展望室に出る。頂上から見えるのは切れ目のない太平洋の水平線で、眼下では海岸線が南へ弧を描いていく。吹きさらしで風が強い。ゆるいものは押さえておくこと。そして風が強い日は、そもそも昇塔が中止になる。
資料展示館のフレネルレンズ
塔のかたわらの建物に、かつて使われたレンズ装置と明治の灯台事業の資料が収められている。地上で、実寸のレンズを間近に見ること——それが、塔の中で起きていた工学を理解可能なものに変えてくれる。
岬の遊歩道と君ヶ浜
灯台から岬をめぐる道が伸び、白い崖と、南へ長く伸びる君ヶ浜の砂浜が見える。岬を歩くと、塔にスケールが戻ってくる。遠くから見ているうちは、これは建物ではなくただの目印にしか見えない。
銚子電気鉄道
ここまで運んでくれる短いローカル線そのものが見どころだ。二両編成、木の匂いのする小さな駅、そして自社の濡れ煎餅を売ることで経営を支えていることで知られる鉄道会社。犬吠駅で一袋買っていってほしい。冗談ではなく、それが本当にこの会社のビジネスモデルなのだ。

おすすめの楽しみ方

この岬の主題は日の出で、それは元日に限らない。前に遮るもののない東向きの岬だから、晴れた朝ならいつでも成立する。問題は交通だ。始発の列車では夜明けに間に合わないので、本当に日の出を見るなら銚子に前泊するか車で行くことになる。元日の朝は数万人が集まり、周辺の段取りが丸ごと変わる。狙うならきちんと計画を立て、そうでないならその日は完全に避けたほうがいい。ふだんの日の塔は静かだ。本当の変数は風である。ここは関東の海岸でも屈指に風の強い場所で、強風時は昇塔が中止になる。片道2時間半をかける前に、必ず当日の状況を確認したい。銚子電鉄の時間は行き帰りとも余裕を見ること。この日の形を決めるのは灯台ではなく、あの時刻表のほうだ。

実際の行き方

起点
東京駅
所要
約2時間30分 · JR+ローカル線
降車
犬吠駅(銚子電気鉄道)
  1. 東京駅→銚子駅(JR総武本線 特急しおさい・約2時間)。
  2. 銚子駅→犬吠駅(銚子電気鉄道・約20分/1時間に1〜2本)。
  3. 犬吠駅→犬吠埼灯台(徒歩約10分・緩やかな上り)。
JRで銚子へ、銚子電鉄に乗換
東京駅→(JR総武本線 特急しおさい・約2時間)→銚子駅→銚子電気鉄道に乗換→(約20分)→犬吠駅→緩やかな坂を徒歩約10分で灯台。計約2時間30分。銚子電鉄は1時間に1〜2本程度なので、銚子駅に着いたら時刻表を確認すること。
帰りは犬吠駅から
銚子電鉄で銚子駅へ戻り、JR総武本線で東京方面へ。どちらも東京の感覚では本数が少なく、特急の最終は夕方から夜にかけて出てしまう。帰りの時刻は出発前に決めておきたい。とくに日の出目当てで来て一日過ごすつもりなら必須だ。
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行く前に

現金
塔への入場と隣接の資料展示館は有料。ここでも銚子電鉄でも、現金を前提にしておくほうが安全だ。小さな駅と車内販売はキャッシュレス対応が一様ではない。
定休
通常は毎日開いているが、風が強い日は塔への昇塔が中止になる。この岬では珍しくないことだ(敷地と展示館は通常どおり開いていることが多い)。冬は閉館が早い。元日の朝は特別体制で、混雑は桁違いになる。
別ルート
銚子電鉄の時刻が合わなければ、銚子駅から犬吠埼方面のバスもある。車の場合は岬の近くに駐車場があるが、元日は夜明け前に満車になる。
降りたあと
犬吠駅から岬方面の案内に従って徒歩約10分。緩やかな上りで、途中に名物の濡れ煎餅を売る土産物店が並ぶ。白い塔は道中のほとんどで見えている。

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