京都西・嵯峨野/嵐山No.382★★地図で見る →
常寂光寺
京都西部・小倉山の斜面に建つ日蓮宗の寺。茅葺きの仁王門、1620年の多宝塔、約200本のカエデで知られる。

常寂光寺は平らな寺ではない。茅葺きの仁王門をくぐると道はすぐ石段に変わり、堂宇は小倉山の東斜面を削った段の上に置かれている。本堂がひとつの段、鐘楼がその上、小さな多宝塔はさらに上。境内が横に広がらず縦に登っていくため、全体を一度に見渡すことができない。石段をひとつ上がるたびに、屋根と苔とカエデの組み合わせが違って見える。多宝塔脇の平場に立つと、西へ視界が開けて嵯峨野の屋根越しに京都盆地と比叡の稜線が見える。境内には約200本のカエデが植わり、晩秋には下から見上げれば一枚の赤、石段の途中から見れば赤い天井になる。寺の名は「常寂光土」——永遠に静かな光の浄土——から採られている。この場所そのものの質からつけた名だと、寺は伝えている。
なぜ穴場のままか
竹林と天龍寺は10分下にあり、嵐山の人出のほぼ全部をそこで吸収してしまう。そこから北西の小道を登り続ける英語旅程はほとんどない。しかも境内が中庭に広がるのでなく段々で登っていく構造のため、11月最終週——京都のほかの紅葉名所がどこも行列になる時期——でも「満員」に見えない。
歴史・背景
創建は1596年(慶長元年)。市中の本圀寺を離れた僧・日禛が、この斜面に隠棲したのがはじまりとされる。茅葺きの仁王門は17世紀初めに本圀寺から移されたもので、仁王像は運慶の作と伝えられる。山の中腹に建つ多宝塔は1620年(元和6年)の建立で、国の重要文化財。檜皮葺きの屋根と細やかな組物が、桃山の華やかさを江戸初期まで運んでいる。斜面そのものにはもっと古い文学の記憶がある。小倉山は歌人・藤原定家が「時雨亭」を営み、百人一首を撰んだと伝えられる場所だ。
見どころ(歩く順)

- 仁王門
- 茅葺きの山門。1600年代初めに本圀寺から移築された。仁王像は運慶作と伝わる
- 多宝塔
- 1620年建立、檜皮葺きの二層塔で国の重要文化財。細部の意匠に桃山の名残がある
- 上段からの眺め
- 多宝塔の脇に立つと西が開け、嵯峨野の屋根越しに京都盆地と比叡山が見える
- カエデの斜面
- 境内の段々に約200本。初夏は同じ斜面が深い緑になり、人はずっと少ない
おすすめの楽しみ方
9:00の開門から1時間以内に入るのがいい。10分下の竹林が嵐山の人出の大半を吸収し、丘を登る道でさらに人は減るが、11月下旬の朝は10時にはもう混み始める。靴は石段を登れるものを。境内はほぼ全部が階段と苔で、いちばんいい角度は「振り返って見下ろす」ところにある。半日あるなら、同じ小道の先にある二尊院・祇王寺と続けて回れる。いずれも徒歩10分圏内。
実際の行き方
- 京都駅→嵯峨嵐山駅(JR嵯峨野線・約15分)。
- 竹林と天龍寺の前を南西へ、そこから北西の坂道を上って仁王門まで(約15〜20分)。
- 段を登る——本堂、鐘楼、そして1620年の多宝塔と、西に開ける嵯峨野の眺め。
- 京都駅→嵯峨嵐山駅、そこから徒歩
- 京都駅 →(JR嵯峨野線・山陰本線/普通または快速・約15分)→ 嵯峨嵐山駅。南口を出て南西へ、トロッコ嵯峨駅の前を通って竹林方面の小道へ。天龍寺の北門を過ぎたらそのまま北西へ進む。常寂光寺の門までは徒歩15〜20分ほどで、英語の案内板も出ている。京都駅から合計およそ35分。
- 嵯峨嵐山駅、または嵐電嵐山駅へ戻る
- 来た道を下れば嵯峨嵐山駅(JR)まで約20分。南へ足を延ばして嵐電(京福電鉄)の嵐山駅から市街へ戻れば、時間はかかるが車窓は楽しい。JRは夕方まで1時間に数本の運行。
行く前に
- 現金
- 拝観料は仁王門で徴収され、大人で数百円。門の受付はカードに対応していないので現金を持っていくこと。行きのJRはICカード(ICOCA・Suica等)が使える。境内でほかに費用はかからない。
- 定休
- 拝観は9:00〜17:00、受付は16:30まで。11月下旬が紅葉の最盛期で、石段の流れが遅くなる。最も静かなのは開門から最初の1時間。石段は急で不揃いな箇所があり、上の段までバリアフリーの経路はない。
- 別ルート
- 四条大宮から嵐電で嵐山駅へ出る経路も気持ちがよい(約25分)。そこから嵯峨野を北へ徒歩20分で寺に着く。市バス28系統・11系統も嵐山へ行くが、行楽期は所要が読めない。
- 降りたあと
- 嵯峨嵐山駅から南西の竹林方面へ進み、天龍寺を過ぎてそのまま北西へ。丘のふもとに茅葺きの仁王門が立つ。徒歩15〜20分。