京都北部・鞍馬No.383★★地図で見る →
鞍馬寺
鞍馬弘教の総本山。京都北山の杉の斜面に伽藍が広がり、本殿金堂前に金剛床、裏手には貴船へ抜ける尾根道がある。

鞍馬寺は塀で囲われた敷地ではなく、山の斜面そのものを占めている。ふもとの仁王門から杉木立を縫って地面はゆっくり上がり、本殿金堂に至り、その裏でさらに尾根へと上がっていく。本殿金堂前の平場に敷かれているのが金剛床——星曼荼羅を模した円形の石組みで、参拝者はその中心に立って堂に向かう。日本人参拝者の多くはこの一点のために登ってくる。この寺は天台でも真言でも禅でもない。20世紀半ばに独立し、いまは鞍馬弘教の総本山として、尊天——千手観音・毘沙門天王・護法魔王尊の三身で表される宇宙の大霊——を本尊とする。本殿の裏からは木の根と岩の道が尾根を越えて奥の院へ続き、そのまま貴船の谷へ下りる。歩けば約1時間。訪問が「立ち寄り」ではなく「山越え」になる。
なぜ穴場のままか
英語ガイドは鞍馬を「登山」か「温泉の日帰り」として扱い、寺そのものは貴船へ向かう途中の通過点に格下げされる。だが実際にはここは独自宗派の総本山で、その宇宙観も年中行事も日本のほかのどこにもない。そして京都の主要寺院としては珍しく、来た道を戻るのではなく尾根を越えて歩いて去ることができる。
歴史・背景
寺伝では宝亀元年(770年)、僧・鑑禎が山に導かれ毘沙門天を安置したのが草創とされる。都の北方を守る霊場として発展し、古典文学にも繰り返し現れる。『枕草子』は「近うて遠きもの」として九十九折の参道を挙げ、牛若丸——のちの源義経——が本殿裏の谷で天狗に武芸を習ったという伝説もここが舞台だ。1940年代に天台宗を離れて鞍馬弘教を立宗した。年中行事も独特で、6月20日の竹伐り会式、5月の満月の夜に営まれる五月満月祭(ウエサク祭)がある。なお10月22日の「鞍馬の火祭」は鞍馬寺の行事ではない。参道の途中に建つ由岐神社の例祭である。
見どころ(歩く順)

- 金剛床
- 本殿金堂前の平場に敷かれた円形の石組み。星曼荼羅を模す。山内でいちばん写真に撮られる場所
- 九十九折参道
- 仁王門から杉木立を抜けて本殿へ上がる約30分の道。途中に由岐神社と大杉がある
- 本殿金堂
- 尊天を三身で祀る中心道場。御本尊は秘仏で、60年に一度・丙寅の年にのみ開扉される
- 奥の院と貴船への尾根道
- 本殿の裏から木の根と岩の道が奥の院へ上がり、貴船の谷へ下りる。片道およそ1時間
おすすめの楽しみ方
早い時間に出て、「寺に寄る」ではなく「半日歩く」つもりで組むといい。定番は、叡電で鞍馬まで出て九十九折参道を歩いて登り、本殿金堂と金剛床でゆっくりしてから尾根を越えて貴船へ下り、川沿いで昼を食べて貴船口駅から帰る——引き返さずに抜ける形だ。靴はしっかりしたものを。尾根の区間は木の根と岩と段で、舗装路ではない。登りたくない場合はケーブルカーが最も急な部分を担ってくれて、あとは徒歩10分。叡電の市原〜二ノ瀬間「もみじのトンネル」は、それだけでも窓側に座る価値がある。
実際の行き方
- 京都駅→出町柳(東福寺経由・約15分)→叡山電鉄で鞍馬駅(約30分・500円)。
- 徒歩3分で仁王門、愛山費500円を納める。
- 九十九折参道を徒歩約30分、またはケーブル2分+徒歩10分で本殿金堂と金剛床へ。
- 京都駅→出町柳→鞍馬駅
- 京都駅 →(JR奈良線で東福寺、京阪本線で出町柳へ・約15分)→ 出町柳 →(叡山電鉄鞍馬線・約30分・500円)→ 鞍馬駅。仁王門は駅から徒歩3分。叡電は15〜20分間隔で、一部は窓向きシートの展望列車「きらら」で運行される。
- 鞍馬駅から戻る、または貴船へ抜ける
- 鞍馬駅から来た道を戻るのが基本。もうひとつは奥の院を越えて貴船の谷へ下りる道(本殿から約1時間)で、京都バス33系統か徒歩で貴船口駅へ出て叡電に乗る。到着したら鞍馬駅で終電時刻を確認しておくこと。この路線は深夜まで走らない。
行く前に
- 現金
- 愛山費は大人500円。仁王門を入ってすぐで徴収される(現金)。山門駅〜多宝塔駅のケーブルカーは別に寄付金として片道大人200円・小学生以下100円。叡山電鉄はICカード(ICOCA・Suica等)が使えるが、寺の受付では使えない。
- 定休
- 山内の道は日中開いているが、ケーブルカーの最終は夕方前に終わる。出かける前に当日の時刻を確認すること。冬は尾根道と貴船への横断路が凍り、寺が通行を止めることもある。10月22日の火祭の日は集落も叡電も収容力を超えるので、ふらりと訪ねる日には向かない。
- 別ルート
- ケーブルに乗らず全部歩く選択もある。仁王門から本殿金堂までの九十九折参道は徒歩約30分。途中に由岐神社と大杉があり、歴史的にはこちらが本道だ。体力があるならこちらを勧める。
- 降りたあと
- 鞍馬駅を出て集落の道を左へ。徒歩約3分、右手に朱塗りの仁王門が立つ。