奈良・明日香村No.378★★地図で見る →

高松塚古墳

history穴場——実はすごい

明日香村にある7世紀末〜8世紀初頭の小さな円墳。国宝の極彩色壁画は保存のため取り出され、古墳は復元された姿だけが残る。壁画は隣接する館で模写として公開されている。

高松塚古墳
実写(ライセンス済み)Saigen Jiro / CC0

1972年3月、明日香村の小さな塚が開けられ、石室の壁が絵で埋まっていた。東壁に青龍と日像、西壁に白虎と月像、北壁に玄武、そして色鮮やかな衣の男女群像。西壁の女子群像は「飛鳥美人」として一夜で全国に知られ、7世紀の日本の姿を人々が思い描く前提そのものを更新した。そして壁画は壊れ始めた。密閉されていた石室に空気と人が入り、カビが広がった。年々深刻になる処置を重ねたのち、石室そのものを解体し、ブロックごと保存施設へ移して管理下で修理する決断が下される。だから、いま訪れる高松塚古墳は奇妙に正直な存在になっている。国営公園の静かな一角に、芝で復元された塚が立ち、中には何もない。壁画は物語の半分だけ手前にある——坂を1分下った館に精巧な模写と石槨の実物大模型があり、本物の彩色石は年に数回、事前応募制でガラス越しに見られるだけ。文化財の保存に実際どれだけの代償がかかるのかを、これほど明快に見せる場所は日本に多くない。

なぜ穴場のままか

高松塚は日本の教科書に必ず載る古墳で、訪れる人は彩色された石室を覗けると思って来る。壁画は2007年に古墳を離れ、いまは抽選でしか見られない。それを知ってから行くと、この訪問は失望ではなく主題そのものになる——1300年前の絵を生かし続けるのに何が必要かを見に行くことになる。

歴史・背景

築造は7世紀末から8世紀初頭。奈良県観光公式の記載では直径18m・高さ5mの円墳で、被葬者はこの時代の皇子か高位の貴族と推定されている。1972年3月に発見された壁画は国宝に指定された。現地での保存はカビの被害を止められず、2007年に石室が解体され、仮設の修理施設へ移送された。修理は現在も続いている。文化庁は修理作業室を年に数回、事前応募制で公開している。2022年は発見50周年にあたり、明日香村が記念事業を行った。

見どころ(歩く順)

実写(ライセンス済み)KENPEI / CC BY-SA 3.0
高松塚壁画館
古墳のすぐそばの展示館。四面すべての精巧な模写と、石槨の実物大模型を展示する
復元された古墳
芝を張り直して形を整えた塚そのもの。中は空。屋外なのでいつでも近くまで歩ける
国営飛鳥歴史公園
古墳をとりまく芝地と園路。日本最初期の宮都の一帯を覆う国営公園の一部
修理作業室の公開
文化庁が年に数回、事前応募制で壁画の修理作業室を公開する。本物を見る唯一の方法

おすすめの楽しみ方

壁画館は9:00〜17:00(入館は16:30まで)、大人300円・学生130円・小人70円。古墳と周囲の公園は無料で開放されている。明日香は平坦で自転車向きの土地だ——飛鳥駅のレンタサイクルを借りれば、バス時刻に縛られる一日が自由に動ける一日になる。高松塚は数km圏内のキトラ古墳・石舞台古墳・稲渕の棚田と自然に組める。修理作業室の公開に応募したいなら、旅程を組む前に文化庁のサイトを確認しておくこと。日程は事前に告知され、すぐ埋まる。

実際の行き方

起点
京都駅
所要
約2時間 · 近鉄+徒歩15分(レンタサイクル可)
降車
飛鳥駅(近鉄吉野線・徒歩約15分)
  1. 京都駅→橿原神宮前駅(近鉄京都線 急行・約50分)。
  2. 橿原神宮前→飛鳥駅(近鉄吉野線・約4分)。明日香を回るならここでレンタサイクル。
  3. 徒歩か自転車で約15分、高松塚地区へ。先に古墳、そのあと下の壁画館。
京都から橿原神宮前経由で飛鳥へ
京都駅→(近鉄京都線 急行・約50分)→橿原神宮前駅→(近鉄吉野線に乗換・約4分)→飛鳥駅。駅から東へゆるやかな上りを徒歩約15分で国営飛鳥歴史公園の高松塚地区に着く。京都から計 約2時間。電車は日中を通して定期的に走っている。
飛鳥駅から戻る
徒歩か自転車で飛鳥駅に戻り、吉野線で橿原神宮前へ、そこから京都線で京都へ。大阪方面なら大和八木経由で大阪線に乗る。夕方以降は本数が減るので、出発前に帰りの接続を確認しておく。
現在地からの経路を開く(Google マップ)↗

行く前に

現金
壁画館は大人300円・学生130円・小人70円(団体割引あり)、現金払い。古墳と公園は無料。飛鳥駅のレンタサイクルは時間または1日単位で別料金。近鉄はICカードが使える。
定休
壁画館の最終入館は16:30。本物の壁画がある修理作業室は当日ふらりと入れる場所ではない——文化庁の事前応募制で年に数回のみ。見たいなら数か月前から計画する必要がある。
別ルート
飛鳥駅でレンタサイクルを借りるのがいい。明日香の見どころは平坦な農地に数kmにわたって散らばっていて、本数の少ない赤かめ周遊バスから解放される。自転車に乗らないなら同じ周遊バスも利用できる。
降りたあと
飛鳥駅から東へ、「国営飛鳥歴史公園 高松塚地区」の案内に従って進む。徒歩約15分。壁画館は塚より一段低いところにある。

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