奈良・多武峰No.337★★地図で見る →
談山神社
多武峰に鎮座する藤原鎌足ゆかりの古社。678年の創建と伝わり、高さ16.17メートルの十三重塔は木造としては世界で唯一現存する。

バスは桜井の市街を抜け、細い谷を登って石段の下に着く。段を上がり、朱塗りの社殿を越えた先に、目当てのものが山肌を背に立っている。十三の屋根が上へすぼまりながら重なる木造の塔。高さ16.17メートル。十三重塔は石造ならいくつか残っているが、木造でいまも建っているのは世界でここだけだ。鎌足の子・定慧が父の遺骨を納めるため678年に建てたと伝わり、現在の塔は1532年の再建。周囲には回廊でつながれた社殿が段状に広がり、深い朱の塗りがカエデの色と重なる。谷を埋めるカエデは約三千本。「関西の日光」という異名は日光東照宮から借りた大げさな讃辞だが、11月下旬に立ってみると、そう外れてもいない。
なぜ穴場のままか
木造の十三重塔は世界にこれ一基しか残っていない。それが奈良市街から40分の場所にあり、東大寺に並ぶ人数のごく一部しか訪れない。しかもこの山腹は、古代日本の国家を作り替えた政変が生まれた場所でもある。歴史の重さと訪問者数の比では、関西でも屈指の場所だ。
歴史・背景
645年、中臣鎌足と中大兄皇子はこの山で密談し、権勢をふるっていた蘇我氏を除く計画を立てた。クーデターは成功し、続く大化の改新が日本の国家のかたちを変えた。山の名はその会話に由来する——「かたらい山」が縮まって談山になった。鎌足は669年、臨終の際に藤原の姓を賜り、以後五百年にわたって朝廷を動かす一族の祖となる。唐に学んだ僧である子の定慧が678年にこの地を開き、父の墓上に十三重塔を建てたと伝わる。明治の神仏分離までは多武峰寺という寺院として機能しており、現在の「神社」という姿はそのときに定まったものだ。
見どころ(歩く順)

- 十三重塔
- 高さ16.17メートル、1532年再建。木造の十三重塔として世界で唯一現存する
- 拝殿・本殿
- 上段の朱塗りの社殿群。回廊でつながれ、連子窓越しにカエデが額縁のように見える
- けまりの庭
- 毎年4月と11月、平安装束で蹴鞠が奉納される庭。宮廷の遊びが今も続く場所
- 塔上の平場からの眺め
- 十三の屋根と三千本のカエデが重なる、この神社の定番の構図
おすすめの楽しみ方
多くの人が来るのは11月下旬で、その2週間だけは石段に行列ができ、バスも満員になる。それ以外の季節なら境内はほぼ貸し切りに近く、塔は夏の緑を背にしても十分に美しい。4月中旬と11月初旬の蹴鞠奉納は、日程を合わせる価値がある。桜井からのバスは本数が少なく、紅葉期以外は土日のみの便もある。登る前に必ず帰りの時刻を確認しておくこと——乗り遅れるとタクシーしかない。
実際の行き方
- JR奈良駅→桜井駅(JR万葉まほろば線・約30分)、または大阪上本町→桜井駅(近鉄大阪線・約40分)。
- 桜井駅南口→談山神社バス停(奈良交通・多武峯線・約25分)。
- バス停→鳥居(石段を数分)。
- 桜井駅まで出て、多武峯行きのバスで谷を登る
- 奈良から: JR奈良駅→(JR万葉まほろば線・約30分)→桜井駅。大阪から: 大阪上本町→(近鉄大阪線・約40分)→桜井駅。桜井駅は南口へ出て、奈良交通バス「談山神社」行きに乗車(約25分・およそ500〜570円)。バス停から石段を数分登ると鳥居。
- 同じバスで桜井へ下る
- 帰りのバスは石段下の同じ停留所から。本数は少なく最終は夕方。紅葉期以外は土日のみ運行の便もあるため、上がる前にバス停の時刻表か社務所で必ず確認を。
行く前に
- 現金
- 拝観料は大人600円、山門で現金払い。鉄道と奈良交通バスはICカード(ICOCA・Suica)が使える。境内にATMはない。
- 定休
- 8:30〜16:30(最終受付16:00)。通年開門。秋のライトアップ期間は時間延長あり——最新日程は公式サイト(tanzan.or.jp)で確認。
- 別ルート
- 古代国家発祥の地・飛鳥は同じ尾根の反対側。石舞台古墳や酒船石が点在し、一日あるならレンタサイクルで談山神社と組み合わせられる。
- 降りたあと
- 桜井駅は必ず南口へ。多武峯行きのバスは北口からは出ていない。行き先表示は「談山神社」で、終点が神社。