東京中央・築地No.351★★地図で見る →
築地本願寺
東京・築地にある浄土真宗本願寺派の寺院。1930年代に古代インド仏教建築を写して再建された本堂は、石造のドーム、動物の彫刻、ステンドグラス、パイプオルガンを備える。国の重要文化財。拝観無料、築地駅から徒歩1分。

築地本願寺は、京都・西本願寺を本山とする浄土真宗本願寺派の東京の寺院である。1617年の創建、焼失、そして江戸湾を埋め立てた土地への再建——「築地」という地名そのものが、その造成に由来する。いま建つ本堂は1930年代の竣工で、設計は東京帝国大学の建築史家・伊東忠太。仏教の源流をたどってアジアを歩いた人物だった。彼は見慣れた木造の寺院様式で建て直すことを選ばず、日本の門徒に古代インド仏教建築を写した石の建物を用意した。ドームを頂いた屋根、左右対称に広がる石の正面、半円アーチの窓。そして中に入ると、その主張は完結する。須弥壇は正統な浄土真宗のしつらえ——京都でつくられた金色の荘厳——であり、それを囲む堂内にステンドグラスと西洋式のパイプオルガンが同居している。伊東は建物のあちこちに動物も彫り込んだ。獅子、象、馬、牛、猿、そして翼を持つ霊獣が、入口の階段や柱に潜んでいる。彼の作品の署名のようなものだが、大半の参拝者は気づかずに通り過ぎていく。
なぜ穴場のままか
日本で最初に見る寺は、たいてい同じ木造の語彙で建っている。この寺は意図的にそこから外れており、しかもその理由が意匠ではなく思想として残されている。「仏教の生まれた国の様式で日本の寺を建てて何が悪いのか」——設計者の主張はそういうものだった。東京で最も歩かれる食の通りから1分、拝観無料、しかも早朝から開いている。見に行く手間がほぼゼロだからこそ、かえって素通りされている場所でもある。
歴史・背景
1617年、京都・西本願寺の江戸の拠点として建立された。1657年の明暦の大火で焼失した際、幕府は元の場所での再建を認めず、代わりに与えられたのが江戸湾の海上だった。門徒たちは自らの手で土地を埋め立て、その造成から「築地」という地名が生まれた。以後およそ三世紀にわたって建っていた木造の本堂は、1923年の関東大震災に伴う火災で失われる。1930年代に竣工した伊東忠太設計の石造本堂は、のちに国の重要文化財に指定された。
見どころ(歩く順)

- 石の正面と中央のドーム
- 外観は日本というより南アジアのそれに近い。左右対称に広がる石の正面、入口の上に載るドーム、半円アーチの窓。撮るなら新大橋通りの向かい側から——両翼を切らずに全幅が一枚に収まる。
- 階段と柱に潜む動物たち
- 獅子、象、馬、牛、猿、そして翼のある霊獣が、正面階段の親柱や柱頭に彫り込まれている。どれも小さく見落としやすい。階段の手すりの端と、上りながら見上げた柱の頂部を意識して探すとよい。
- 本堂の内部
- インド様式の外殻の内側にあるのは、金色に荘厳された正統な浄土真宗の内陣である。この落差こそがこの建物の主題だ。入口上部にはステンドグラス、後方のギャラリーには本堂に向いたパイプオルガン——日本の仏壇の上でそうそう見られる眺めではない。
- インフォメーションセンターの十八品の朝ごはん
- 本堂脇のインフォメーションセンターにあるカフェが出す、小鉢十八品の朝食セット。この数は、浄土真宗の教えの核心にある阿弥陀仏の第十八願にちなむ。朝から営業し、週末は行列ができる。
おすすめの楽しみ方
本堂は東京のどの美術館よりも早く開き、その最初の数時間がいちばん静かだ。毎朝、堂内で朝のお勤めが営まれている。だから組み合わせは自ずと決まる——築地場外市場が徒歩1分。市場の店は5時頃から開き、9時頃には落ち着いて見て回れるので、早朝に寺、その後に市場という順番なら、どちらも急がずに済む。無料のランチタイム・パイプオルガンコンサートが月ごとの日程で開かれている。開催日は公式サイトで確認を。本堂は土足のまま上がれる。堂内の撮影も、法要中の節度を守れば認められている。
実際の行き方
- 東京駅→銀座駅(東京メトロ丸ノ内線・約3分)。
- 銀座駅→築地駅(日比谷線に乗換・約3分)。
- 築地駅1番出口→築地本願寺 正面階段(徒歩1分足らず・平坦)。
- 東京駅→銀座駅→築地駅
- 東京駅→(東京メトロ丸ノ内線・約3分)→銀座駅→乗換→(日比谷線・約3分)→築地駅。1番出口を出ると、新大橋通りを挟んで正面に石造の外観が立っている。乗換と徒歩を含めて計約15分。数分間隔で運行しているため、時刻表の確認は不要。
- 帰りは築地駅から
- 日比谷線で銀座・東京駅方面、あるいは秋葉原・上野方面へ戻れる。早朝から深夜0時過ぎまで走っているので、日中の訪問なら終電を気にする必要はない。
行く前に
- 現金
- 境内・本堂の拝観は無料。インフォメーションセンターのカフェと売店はカード・IC決済に対応。堂内のお賽銭や小物は現金で。
- 定休
- 本堂は毎日、早朝から夕方まで開いている。インフォメーションセンターの営業時間はそれより短い。法要が随時営まれており、堂内の一部が入れないこともある。当日の予定は公式サイトに掲載される。
- 別ルート
- 都営大江戸線「築地市場駅」から徒歩約5分。東銀座駅(日比谷線/都営浅草線)からも徒歩約5分で、銀座から歩いて来る場合はこちらが便利。
- 降りたあと
- 築地駅1番出口を上がると、広場の先に本堂の正面が見えている。徒歩1分足らず、道は完全に平坦。